聞いてない

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「好きなのかどうか、まだよくわからないし、むこうは会社の社長だよ。私、…社長に釣り合うとは思えない…」 私がそう言うと、幸恵は私の顔を覗いた。 「なる、…それ、考え方かえたほうがいいんじゃない?」 「え?」 「社長として見ないでさ、一人の男として見なきゃダメだよ」 一人の男? 「夏野悠哉が社長じゃなくて、ただの社員なら付き合うの?」 ただの社員なら? なんか、痛いとこ突かれた気がする…。 私が一人悩んで黙っていると 「はいは~い。考えるのそこまで。とりあえずビールきたんだから飲むわよ!」 そして乾杯した。 そのあとも、私の頭の中に社長が見え隠れするんだけど、今日は幸恵のおめでたい話しでいっぱいだった。 家に着いたのは真夜中。 何もやる気になれなかった私は、すぐベッドに横になってしまった。 ホントはいけないんだけど…。 今日はこの酔いにしあわせを感じつつ、いつの間にか眠りについた。
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