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車が、私のアパートの前に到着した。
ちゃんと社長にお礼しなくちゃ。
「社長。今日はありがとうございました」
社長が笑顔で、私を見てくれている。
「ところで、おまえ今日は何も予定なかったんだろうな?」
え~、それ今聞くの!?
遅すぎ!
「…予定なんて何もありませんでした」
私は少しひねくれたように答えた。
そんな私を見て、クスクス笑う社長。
社長の笑顔につられて、私も笑った。
「すごく、楽しかったです。ホントにありがとうございました。帰り、気をつけて帰ってくださいね」
そう言って、私は車のドアを開けて降りた。
ドアを閉めて車から離れ、自分の部屋へ向かおうと歩きだす。
後ろで、車のドアが開いて閉まる音が聞こえた。
「なる」
呼ばれて振り向くと、社長が私に近づいてくる。
首に巻いてあるマフラーをほどきながら…。
ああ、私ってばまた忘れていくとこだった。
「社長、すいません」
そう言って、受け取ろうと手をだした。
でも、社長は私の手を見なかった。
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