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マフラーを私の首にフワッと回したかと思ったら、社長は、そのまま流れるように私に唇を重ねた。
「んっ!」
社長の唇が、ひんやり冷たい。
あまりに唐突で、目を開けっ放しにしていた私は、ギュッと目を閉じた。
ああ…、どうしよう。
抵抗するタイミングを見失ってしまった。
私の心の中で、葛藤が始まる。
このまま受け入れていいの?
それとも、今からでも抵抗するべき?
そんな私をよそに、始め冷たかった社長の唇が、少しずつあたたかく、熱を帯びてくる。
長いキスだった。
何回か社長が角度を変えて動くくらいで、ただ重なっているだけのキスなんだけど…。
さっきまでいろんなこと考えていたのに、何も考えられなくなってしまう。
そして、唇が離れた。
それを合図に、私は目を開けた。
社長が、真剣な眼差しで私を見ている。
「なる。俺は、おまえにキスするたびに思う」
…何?
「おまえの唇は俺を好きだと言ってるようにしか思えない」
私の胸の奥がキュウッと苦しくなったような気がした。
「おまえは、まだ俺に遊ばれてると思ってるのか?」
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