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「あ、悠哉。…私、そろそろ帰ってみますね」
私がそう話しかけると、悠哉はこっちをパッと見て冷蔵庫を閉めた。
「…帰る?」
「はい。もう9時になっちゃうし、そろそろ帰らないと電車が…」
悠哉が冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをグラスへ注ぎはじめた。
「帰るなんて聞いてないぞ」
「でも、悠哉。明日仕事ですよね?」
グラスへ注いだミネラルウォーターを飲みながら、悠哉が私を見る。
「仕事って言っても、そんなすぐここを出るつもりはない。泊まっていけ」
「…でも」
私がしゃべろうとしたのに、悠哉は無視するかのようにグラスを置くと、ジリジリと近づいてきて、私を流し台の前へと追い込んだ。
悠哉は流し台へと私を囲うように手をつく。
「でも、なんだ?」
そんな、獲物を品定めするかのような目付きで私を見ないでよ。
目が泳いでしまう。
「…着替えの換えも、もう持ってきてないし…」
悠哉は私を見つめたままでいた。
「…そうか。…じゃあ次くるときはまとめて持ってきておけ」
ホッ…。よかった。なんとか帰る意思が伝わったみたい。
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