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降りてきたのは、やっぱり専務だった。
ああ…、助けて…。
専務が咳払いをして、悠哉に挨拶した。
「ううん!……社長、おはようございます。お久しぶりです」
その声に、私を抱き締めている悠哉の手は緩まり、後ろへ振り返った。
「ああ、片桐か。不在中、ご苦労だったな」
「いえ、何事もなく出張を終えれて何よりです」
ちょっと、…二人で冷静に会話しないで。
恥ずかしくて顔が真っ赤な私の立場になってほしい…。
「社長がご不在の間、仕事がたまってます。すぐ確認して頂けますか」
「ああ、昨日少し目を通しておいた。また随分とたまったな」
そう言って、悠哉は私の頭をポンポン撫でて笑顔を見せると、社長室へ歩いていった。
悠哉、この状況で私を置いて専務と二人きりにしないでよ…。
どうしよう…、顔が熱い。
専務を見ることができない…。
でも、とりあえず、挨拶しなきゃ。
「せ、専務、おはようございます」
さっきのを見られての今、平常心で専務に挨拶できるほど私の心に余裕はない。
そんな私をよそに、専務はいつもと変わらない笑顔で挨拶してくれた。
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