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「クロスさんの体が透けてる……」
微笑むクロスさんの体が薄い……。
あたしの恐れてた事が起きようとしてる……。
「もしかして僕が見えなくなってきてるのか?」
慌ててクロスさんはあたしに駆け寄った。
「いや!
折角気持伝えれたのにいやだよ!
消えないで!」
あたしはクロスさんにしがみつき泣き叫ぶ。
見えなくなるなんて!
会えなくなるなんて!
嫌!
悲しいの!
辛いの!
嫌なの!
「麗華ちゃん、僕の話を聞いて!」
泣き叫ぶあたしをクロスさんがギュッと抱きしめた。
「うぐ……」
あたしは必死で涙をこらえクロスさんの話を聞く。
「僕が見えなくなっても消えてしまっても僕は……サンタは君の近くにいるから」
クロスさんの感触が薄れていく……。
あたしの体に抱きしめられた余韻が残る。
「クロスさん……」
こうしてあたしの前からクロスさん……サンタクロースは消えた。
もう二度と彼を見る事はない。
そう思うと涙が次から次へと止まらなくなった。
今年のクリスマスは涙雨が降っていた。
涙雨は次第に雪へと変わっていった。
眠れなかったあたしは白い雪を眺めて一夜を過ごした。
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