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***
――十年前――
「今年は雪が降って寒いな。
ここで最後だし、頑張れ僕」
スーッと音もなく窓から誰かが入ってきた。
赤い三角帽子に赤い服、ふさふさの髭とまゆげ。
背中には大きな白い袋。
そう。
サンタクロースだ。
「…………」
あたしはサンタクロースをジッと見つめる。
どうやらサンタクロースの方はあたしに気づいていないようだ。
「?!」
暫くして漸くあたしに気付いたサンタクロースは口をパクパクさせている。
「アンタ、サンタクロースなの?」
あたしは単刀直入に尋ねる。
今思うと子供の頃はかなり素直な子だったような気がする。
「どうして!
どうして起きてる!
どうして僕が見える!」
頭を抱えサンタクロースは混乱している。
「サンタクロース見たいから起きてたんじゃないか」
ブゥっとあたしは頬を膨らませる。
「見たくて見えるようなシロモノじゃないぞ、サンタは」
グイッとサンタクロースがあたしを指さした。
「でも見えてるし」
サンタクロースの指を掴みあたしは言い返す。
「だよな」
複雑な顔でサンタクロースは腕組みをして考え込む。
「サンタってさ、トナカイと一緒じゃないの?」
あたしは部屋の中をキョロキョロと見渡す。
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