ボタンと悪魔

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【あのボタンはね言わば、執行猶予みたいなものだよ。例え恨んだとしてもボタンを黒く染めなければいいんだ。ボタンが真紅に染まりきり黒く変わった時、人は裁きを受けるんだよ。誰かの不幸を願うんだ。当然だよね】 僕の肩の上でクスクスと笑いながら、尻尾を振る。 「当然って、もし恨まれた人が恨まれて当然のことをしてたらどうなるの?」 【その場合はね、連帯責任で裁かれるよ。恨まれて当然のことをしたんだ。罰を受けて当然だよね。こっちは執行猶予を与えてあげてるのに、恨んで呪いにするんだもん。人間の方が悪魔より悪魔だよ。まぁ、裁かれるまで恨み続ける人間なんて稀だけどね】 「……裁かれるって、どう裁かれるの?」 【そうだねぇ、あぁ、あそこの男。ボタンが破裂して裁かれるよ】 四月朔日が羽根で指した男を見る。さっきよりもボタンが黒く染まってる。黒が赤を覆い尽くした時、ぶくぶくと膨らんでいく。 ぶくぶくぶくぶく、ぶくぶく。 ぶくぶく。 ばんっ 風船が割れるような音をさせて、黒い血のような液体を撒き散らしながら、ボタンは割れた。割れて、男は崩れ落ちて、のた打ち回る。 声なき絶叫を上げながら、ゆっくり、ゆっくりと、両腕と両足と胴体が捻じ曲げられていく。 まるで子供が粘土を捻って遊んでるみたいに、簡単に捻じ曲げられていく。 骨がべきべきばきばきと砕けようと、血が滲みやがて吹き出ようと、顔が捻じ曲げられ脳がはみ出ようと止まらない。 ようやくそれが止まった時、男は人間の形を失っていた。 【うふふふ…当然だよね。ストーカーをして逆恨みで殺した挙句まだ逆恨みし続けるんだから、当然の罰だよね。まだね、完全には死んでないんだよ。これから火葬されるまでずっと、苦しむんだ。……林檎、どうしたんだい?】 わざとらしくくすくすと嗤いながら、僕に聴いてくる。僕が何に驚いてるか分かってるくせに。 「どうして、母さんと同じ死に方なの?」
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