54人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうねぇ、愛する人を失ったからよ」
「ウォレット伯爵は?」
馬車を降りて、建物の入り口に立つ。
扉の前の従僕が恭しく礼をして、扉を開けた。途端に、まばゆい光が入り込んでくる。
「いい、リズ?あたしはこれからウォレット伯爵夫人リリシアではないの。
レディ・シシーと呼んで頂戴」
「レディ・シシー…、は?」
「あなたは、そうね…面倒くさいから、リズでいいんじゃない?」
「え、あの…」
リズはエリザベスの愛称だ。
父や母、そして仲の良い親戚や友人はエリザベスのことをそう呼んでいる。
これでは仮名の意味がない。
困惑しながらも、エリザベスはリリシアについてパーティー会場に入って行った。
途端に、音楽と、騒がしい笑い声が聞こえる。
社交界ではありえないことだ。
エリザベスは息をのんだ。
最初のコメントを投稿しよう!