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赤い絨毯が敷かれた大階段を、ひとりの少女が降りていく。
ホール内の人々の視線は、少し遅れて来たその少女に釘付けになった。
女達は少女の身につけているドレス、靴、そして髪型を一心に覚えようとする。
次の舞踏会は今日の彼女と全く同じ恰好の女達で溢れ返るだろう。
男達は決して手に入らないその華に見惚れる。
男なら誰もが彼女を欲しいと思うだろう。彼女には、それだけの魅力と権威があった。
白く透きとおる肌、
淡く色づいた唇は咲き初めの薔薇のごときみずみずしさ。
びっしりと生えそろった睫の下の瞳はまるで大粒のエメラルドのようで、誰もがその眼に映ることを願った。
高く結いあげられた髪は金糸のような輝きで、人々は彼女のことをその裕福さと共に“宝石の姫”などと呼んだ。
その名にふさわしく、その髪、その肌には、数え切れないほどの小粒の宝石が輝いていた。
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