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少女の名はエリザベス・アディンセル。
セディス帝国初代皇帝の異母兄が祖だとされる、シェリード公爵家の令嬢である。
彼女は現シェリード公爵のたったひとりの妻、アリアス妃の一人娘であり、つまりは公爵の一人娘であった。
公爵、前公爵もまた兄弟を持たないため、次期シェリード公爵の座を継ぐのはエリザベス嬢の婿だというのは専らの噂である。
建国から五百年近くたった今も、衰えを知らぬシェリード公爵家の主の座。
そして広大な領地を誇る宝石の都シェリードの領主の座。
一発逆転のサクセスストーリーに憧れない男などいない。
結婚が許可される15歳の誕生日を迎えた一昨年の冬から、彼女への求婚者は数知れず。
国中の誰もが、社交界の華の選ぶ相手を推測し合い、賭け事の対象にまでなる始末。
――そう、先月までは。
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