prologue

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大輪の花のような紅のドレスが、ホールの地面に着く。 それと同時に、人々の群れからひとりの青年が進み出た。 こちらも整った顔立ちと長身痩躯の美しい青年である。 エリザベス嬢とそう変りないのではないかと思われるほど白い肌、すっと通った鼻筋。 切れ長の眼は果てしなく広がる海の深い青をたたえており、穏やかな印象を与える。 ご婦人方に言わせると、少したれている目がまたなんとも言えない色気を漂わせているのだとかなんとか。 白い肌と対照的な黒髪は、エキゾチックでまた煽情的だ。 今日もまた流行の最先端を行く彼は、彼の瞳と同じ深い青色のフロックコートを身につけている。 彼の裕福さを示すかのように、金糸と銀糸で装飾を凝らしたものである。 そして、真っ白な絹のクラヴァットを止めるのは、婚約が決まった時に婚約者から送られたみっつの贈り物のうちのひとつ、シェリード産の大粒のエメラルドだ。 婚約者の白い胸で輝くサファイアのネックレスとデザインを同じくするものである。 このセディス帝国では、婚約時にみっつの贈り物をするのが古くからの慣習だった。
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