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「貴方もお似合いでしてよ。
今日はいつもよりなんだか…」
きれい。
そう言おうとして、エリザベスはやめた。
男の人というものは、果たしてきれいと言われて喜ぶものなのかどうかわからなかったからだ。
助けを求めるように後ろを見たが、付添人としてついてきた年の離れた従姉は、面白がるように笑うだけだ。
手助けをするつもりはないらしい。
変なところで話をやめてしまった。
そんな彼女の戸惑いを見透かすように、ヴァレリアンがふ、と笑った。
「今日はいつにも増して美しい。
貴女のようなすばらしい女性と結婚できるとは、私は世界一の幸せ者です、姫君」
ヴァレリアンはエリザベスの手を引いて、その耳許に唇を寄せた。
彼の吐息が、エリザベスの鼓膜を震わす。
「愛しています、…リズ」
それはこちらも同じだと、伝えることができるならよかった。
しかしエリザベスにはできなかった。
ヴァレリアンが微笑んだまま、エリザベスの手を引いて歩き出す。
エリザベスには、なにも返せずに、ただ彼についてホールを歩くことしかできなかった。
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