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 二〇一五年、初冬。この街ではまだ初雪こそ降っていないものの、枯れ果てた落ち葉が舞い、骨のように細い枝を露わにした街路樹たちが寂しげに立ち並び、肌を刺す風はどこか雪のにおいを感じさせる。  学生たちが帰路につき、静かな商店街が賑わいを見せ始める頃、それは起きた。  最初は灰色の雲間から一筋の閃光が射し、次の瞬間、一面の空が眩い光に覆われたのだ。この時はまだ、世界中が“何が起こったのか”をまるで理解できていなかった。  タイル地の白い部分だけを踏んで歩いていた幼馴染みの知佳は足を止め、マフラーから白い息を漏らして言った。 「ねえ智也、今の光……何?」  商店街の小さな電気屋のガラス貼りのショーケースに展示されている大画面テレビには“GOES衛星消失。未曾有のX線被害か”という見出しのニュースが放送されているが、残念ながらショーケースのガラスに遮られてニュースキャスターの声を聞き取ることはできない。 「さあ? 何か人工衛星が壊れたらしいぞ」  おれはそう言って電気屋のテレビを示した。 「え、何それ面白そう。入ろ入ろ」  興味津々の知佳に手を引かれて電気屋の自動ドアをくぐる。しかし店内の空気は物見遊山といった知佳の様子とは裏腹に、どよめきを隠せない様子で来客も店員もニュース番組に食いついていた。
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