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精一杯の勇気を振り絞り、声を前面に出そうと空気を肺へ限界まで送り込む。
なにか話さないと。
まずは無難に景色の話。
そう決心し、「しかし、スゲー景色だな。ほら、夕陽なんて――」と、夕陽に話題を持っていこうとしたその瞬間だった。
風真は突然に立ち上がり、ガラスに額を擦り付けて夕陽を凝視した。
「い、いきなりどうしたの?」
美空が驚いて顔を上げる。風真が醸し出す神妙な雰囲気に呑まれたのか、動揺した声が風真の耳に届いた。
しかし、風真は美空の言葉に答えられずにいた。
決して、無視したわけではない。
ただ、眼前の現実が――襲いかかってくる未曾有の脅威が、信じられなかったからだ。
振り返って、美空もその光景を見た。
そして、一言。呟いた。
「……なに、あれ?」
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