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「俺じゃ家族作ってあげられないね」
少し悲しそうな顔をした。
「いや、どっちかと言うと俺のせいだろ?ゲイだし、最初からそんなものは望んでいない。・・・けどどっかに妬みとかあるのな、人間って最低だ」
「俺もあるから・・・うちも普通のウチじゃないし」
「似た者同士なのかな?これからはお前が家族なんだろ?」
我ながら気障(きざ)な事を云ってる自覚があった。気障すぎてる自分でも嗤える。
なのに裕輔は別の反応を見せていた。
泣いている・・・眼に大粒な涙を浮かべていた。
「どうしたんだよ、なんか悪い事云ったか?」
「違う。嬉しかったんだ。俺を家族と言ってくれて」
デカイ頭を引き寄せて抱き締めた。
「そんなこと位で泣くな」
「俺、淋しかったんだな。自分でも初めて気が付いた。航耶さんが家族って、恋人って言ってくれて嬉しかったんだ」
裕輔の涙に自分も感動した。どこまでコイツは俺を惚れさせるのか。
「これからスカイツリー観に行こう」
「家と反対方向だけど・・・」
「別に東京の夜は眠らないんだ。電車も夜でも走ってる。お前を家に送らなくてもいいんだから・・・行こう」
手をつないでメトロに乗り込む。もう物おじしたりしていなかった。お前のおかげで心の中にもう迷いが消えたんだ。
メトロを乗り継いでスカイツリーへ。商店街の一軒の洋食屋に来た。
「ココの店、前に融資担当してたんだ。シェフ元気かな?」
「いらっしゃい!宮城野さんお久しぶり」
「お店は繁昌してますね」
「席とっておきました。一番奥です」
奥まったところのさらに奥。個室っぽくなった所に通された。
「宮城野さん、例のは最後ですか?」
「ええ、最後でお願いします」
びっくりした顔で裕輔が聞いてくる。
「予約したの?」
「ああ、知り合いだし、お前、こういう店はお前のウチじゃ行きそうじゃないだろ?二十歳になったらまた来よう。ココのワイン安いのにうまいんだ」
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