初デート

3/8
236人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「ちょっと目を離すとヘンなゴミがくっつくな」 「ゴミって・・・」 裕輔は笑う。さっきまで険しい顔をしていたから、ちょっとホッとした。 「やっぱイケメンなんだよ、お前。見張ってなきゃな」 「ごめん。嫌な気分にさせて」 「お前のせいじゃないだろ?」 「でも・・・渋谷っていったから」 「もーなしなし!買い物いこーぜ」 「さっきは嬉しかった。『俺の恋人』って言ってくれた」 「ああ・・・あれね。嫁って言ってほしかった?」 「どっちでもいい。航耶さん好き」 腕を組んできた。どうみても俺が懐いてるようにしか見えないよな。 でも人前で手をつないだり腕を組むなんて初めてだ。三十路でもドキドキする。 裕輔の買い物を見て回ってみんなで使えるものを買った。これが高校三年間の集大成なのだろう。これから厳しい受験戦争が待っている。こんな事もしばらくはお預けだろうな。 「航耶さん!なんか食べよ!お腹すいちゃった」 「そうだな・・・お前いい店知ってる?」 「うん、ファミレスだけど」 「ファミレスでイイよ」 一軒のファミレスに入った。めっきり来た事がなかった。どこもフリードリンクになってるしシステムが変わっていた。それくらい久しぶりなんだ。 ファミレスに来ない理由は、ひとりでメシを食べているから。一人ファミレスはキツイ。あと心の隅でファミリーに対する憧れと妬みがある。 「あんまり来ないから・・・随分変わったな」 「そんなに来てないの?何で?」 「じゃあ、お前は親父さんやお袋さんとくるか?」 「来ないかな、いつも二人ともいないし。家族で行く時はなんかのパーティーとかでドレスコードありとかだから・・・部活帰りに友達としか・・・」 「俺も同じ。独りで入る気しないだろ?幸せそうな家族ばっかだし、実家に帰ったらお袋の手料理だし・・・家族ってのに縁遠いからな」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!