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「ちょっと目を離すとヘンなゴミがくっつくな」
「ゴミって・・・」
裕輔は笑う。さっきまで険しい顔をしていたから、ちょっとホッとした。
「やっぱイケメンなんだよ、お前。見張ってなきゃな」
「ごめん。嫌な気分にさせて」
「お前のせいじゃないだろ?」
「でも・・・渋谷っていったから」
「もーなしなし!買い物いこーぜ」
「さっきは嬉しかった。『俺の恋人』って言ってくれた」
「ああ・・・あれね。嫁って言ってほしかった?」
「どっちでもいい。航耶さん好き」
腕を組んできた。どうみても俺が懐いてるようにしか見えないよな。
でも人前で手をつないだり腕を組むなんて初めてだ。三十路でもドキドキする。
裕輔の買い物を見て回ってみんなで使えるものを買った。これが高校三年間の集大成なのだろう。これから厳しい受験戦争が待っている。こんな事もしばらくはお預けだろうな。
「航耶さん!なんか食べよ!お腹すいちゃった」
「そうだな・・・お前いい店知ってる?」
「うん、ファミレスだけど」
「ファミレスでイイよ」
一軒のファミレスに入った。めっきり来た事がなかった。どこもフリードリンクになってるしシステムが変わっていた。それくらい久しぶりなんだ。
ファミレスに来ない理由は、ひとりでメシを食べているから。一人ファミレスはキツイ。あと心の隅でファミリーに対する憧れと妬みがある。
「あんまり来ないから・・・随分変わったな」
「そんなに来てないの?何で?」
「じゃあ、お前は親父さんやお袋さんとくるか?」
「来ないかな、いつも二人ともいないし。家族で行く時はなんかのパーティーとかでドレスコードありとかだから・・・部活帰りに友達としか・・・」
「俺も同じ。独りで入る気しないだろ?幸せそうな家族ばっかだし、実家に帰ったらお袋の手料理だし・・・家族ってのに縁遠いからな」
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