死者が蠢く星

4/44
前へ
/217ページ
次へ
「なんてことだ…!これじゃこの星はとんでもないこっ!……」 「伍長!」 突如として鳴り響いた銃声に、作業着の男の発言が遮られる 力なく床に倒れ伏した彼に駆け寄り、頭部から大量の血液を流す惨状に足を止める 「残念だったな帝国のお二人さん。脱獄の手順から、ここに辿り着くまでは実に優秀であったともうよ。君も、一介の科学者にしてはもったいないくらいの勇気だ」 白衣の青年が思わず後ずさってしまうと、彼の背後からコツコツと軍用ブーツの硬い音が近寄ってくる 慌てて後ろを振り向くと、硝煙が昇る銃口を向けた連邦軍の将校と、数人の兵士たち 「親衛隊め…!」 「ふふっ、そう睨まなくていい。モルモットはご主人様に従順でなくてはならない…そうは思わないかね?」 「なにを言っている…?」 「なに、研究を仕事にしている君に意見を聞きたかっただけだ。深くは気にしなくていい。なぜなら…」 さっと拳銃を研究者に向け、躊躇なく引き金を引く とっさの事態に硬直してしまった白衣の青年は、腹に銃弾を喰らう羽目になり、ドサリとその場に倒れてしまう 「がっ、くっ…」 「君自身が実験の対象になるからだ。いい結果を期待してるよ、ふふっ」 拳銃を腰のホルスターに戻した将校は、部下たちに合図を出し、悠々とその場から去っていく 床の冷たい感触と、熱を持った腹部の激痛に襲われる青年は、目に涙を浮かべながら、離れていく彼らの靴を眺めていた
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加