死者が蠢く星

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「おいおい、死者が蠢く星ってそういうことかよ…。なんのB級ホラー映画だか…」 短剣をしまい、刀に持ち替えたラミルの視線の先には、呻き声を上げる人型の物体 この星の一般市民NPCだったのであろうか、ジーンズにパーカーを羽織ったブロンドの若い女性は、濁った白い目でフラフラと辺りを見回す 胸の周辺と下半身をひどく破かれていることから、侵攻部隊の残虐な辱めを受けたことは容易に想像できるが、彼らの視線はそこに注がれている訳ではなかった 腹部と胸に穿われた3ヶ所の銃創と、黒く変色した血液 意味の分からない呻き声と血液を垂れ流す口 「要するに、あたしたちの相手はゾンビの大軍ってことだね。お約束通り、頭部を傷つければ倒せるのかな」 「うーん、試してみるか」 チラッと視線を上げた飛鳥に頷き、素早く構えた拳銃を二射 見事に頭部を撃ち抜いた弾丸は脳漿を撒き散らし、崩れ落ちた亡骸が力なく横たわる 「あたりみたいだな。安らかに眠れよ」 「なに格好つけてんのさ。似合わないねぇ」 「うるさいな。包囲される前に突破するぞ」 「ふんっ、話を逸らしてんじゃないよ」 隣に並んでのやり取りを繰り広げるラミルと飛鳥は、そのままの勢いで通りに飛び出していく 残されたニーナが複雑そうな表情でその様子を見つめる 顎に手を当てて髭を動かしたバステトが後ろから抱きつき、そっと耳元に口を寄せる 「…にゃはは、諦めず、ファイトだにゃ」 肉球付きの手でぽふぽふと頭を叩き、バステトも通りへと降りていく 唇を噛み締め、手にした杖を握り直し、彼らの後に続く
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