帝国軍

13/14
前へ
/217ページ
次へ
兵員を腹に抱え込み、ライノーが次々と腰を上げる 脚を折りたたんで塹壕に埋没していた重戦車の車列は、対岸から撃ち込まれる銃弾をものともせず、浅い川へ踏み入れていく 鼻の位置に取り付けられた二門の砲門が数秒間隔で砲弾を放ち、備え付けのチェーンガン数丁が縦横無尽に敵陣を切り裂く 胴体側面に設けられた銃眼にも海兵たちが張り付き、自身の小銃を突き出して敵兵を撃ち倒していく 渡河部隊が川の中ほどに差し掛かったころ、彼らの上空を幾つかの物体が横切った 翼を翻して急降下を始めたそれらは、艦隊から発艦したファイアフライの編隊であった 先頭を飛行する二機が地上に激しい機銃掃射を加え、後続の四機が大量の爆弾を撒き散らす たちまちのうちに敵陣は猛烈な炎に包まれ、弾け飛んだ樹木が水しぶきを上げて川に落下する その様子を静かに見つめていたバイエルンは、さっと立ち上がり、待機していた海兵たちに視線を向ける 「連邦軍の攻撃が怯んだ。先遣隊に続き、我々も渡河を敢行する!総員私についてこい!」 小銃を高々と上げたバイエルンは、湿った地面を蹴散らし、柵を越えて川に飛び込んでいく 雄叫びをあげた他の海兵も彼に倣って我先にと突き進んでいく より激しくなった対岸の爆発音を聞き流しながら、ラミルは銃を地面に置く その場にゆっくりと腰を下ろし、周囲を照らす炎の色と、闇夜を動く人影を見つめる 「終わりかな」 ポツリと呟いたラミルの言葉が現実になるのは、それから二時間後の事であった
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加