195人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
いつものように勤めに出て、久保田さんが一杯の珈琲を入れてくれる。タブレットで新聞を読みながら経済動向を見ていると、久保田さんが顔をのぞきこんできた。
「ん?なんかついてる?」
「いえ、係長この頃顔の色つやが良くて、イケメンにさらに磨きがかかったっていうか・・・フェロモンが出てるっていうか」
「なんだそりゃ?でも健康そうってことだよね、今元気だよ。その節はご心配かけました」
「どっちかと言うと健康じゃなくて、恋をしてるってカンジかな」
んー!鋭い。久保田さんの洞察力にはいつも感服する。恋愛に関してだけだけど。
「先輩、恋してんっすか?もしかして前の子と上手くいったとか・・・」
ニヤニヤしながらやってくる。相変わらず佐野はお喋りすぎる。
「ア・・・ははは、そうだな。そんな感じ?」
「え?係長、彼女が出来たんですか?」
「押し掛け女房ですよね~」
嬉々として喋っている佐野・・・後で締めてやる。
「それはびっくりだな」
向こうの方から声がして近づいてくる。丸山だ・・・ゲイだってバラす気か?
「奥手だと思ってたのになぁ~!人はみかけによらないねぇ」
しらじらしい言葉を並べる。何を企んでいやがる。
「薬指に指輪までしちゃって・・・その子にメロメロってカンジか?」
「丸山には関係ないだろうが」
「関係おおあり、俺、宮城野狙ってたんだよ」
あっさりと、さらりと言いやがった。
でも以外と周りの反応は嫌がる風でも無く普通だった。
「丸山さんにあげるくらいなら、私達融資部女子全員で絶対阻止しますよぉ!何せ宮城野係長は融資部のアイドルですから」
「アイドル?」
「そうです!みんな大ファンですよぉ」
「そ・・・そうなの?ありがとう」
「もう先輩モテモテっすね。俺もあやかりたい」
「お前も彼女いるだろうが」
「えっ?そうなの?この冴えない佐野くんが?」
「先輩~!久保田さん酷過ぎですよねぇ」
「久保田さん、蓼(たで)喰う虫も好き好きっていうだろ?」
「そうですね」
「先輩まで~!酷いっス」
そのうち丸山がいない事に気がついた。アイツ・・・なんかしかけてきそうな気がする。
最初のコメントを投稿しよう!