「苦手だ」

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「そ、それはですね、ついこの間こいつ苦手だと強く思った人がいて、何故かその人の顔がふと思い浮かんだからであって」 「……なるほど、だから動揺したのね」  本当に納得したのか、もしくは裏で詮索しているのか分からないが、とりあえず友理は小さく頷いていた。  まだ赤い顔のままきょとんとしている牡丹も、徐々に頭が話についてきたのか少しずつ顔の赤みも引いてきている。  唐突に、友理は真面目腐った顔で聞いてきた。 「それはともかく。  あんた、加地(かじ)とはどうなのよ。付き合ってるって噂だけど」 「え、違うよ。付き合ってない、付き合ってない」 「悪いけど、私もてっきり付き合っているものだと思ってたわよ。  なんていうか、二人って波長が似てるっていうのかしら。  こう、一緒にいるのがとても自然で、二人にしか分からない世界みたいなのが其処にあるような気がするのよ」 「えぇ、そんなことないよ。  上手く言葉が見つからないんだけど、加地君は“お兄ちゃん”みたいな感じなんだって」 「どちらかというと、“お父さん”の方がしっくりくるような気がするのは、私だけかしら」  ぼそりと小声で呟いた友理の言葉に、二人揃って吹き出してしまった。  彼女も遅れて笑い出し、ひとしきり三人で爆笑した。  加地君は、去年同じクラスになって親しくなった男の子だ。  同い年とは思えないくらい落ち着いていて、とても大人っぽい雰囲気をまとっている。  昔は運動部に入っていたらしいが、部活内でのいざこざや友人関係の都合上もうやらないらしい。
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