「苦手だ」

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 この時期の体育の授業は、プールに切り替わり始めていた。  今日はとても天気が良く、雲ひとつない夏照りの快晴だ。  しかし、その環境下で見学を余儀なくされたあたしは、非常に不機嫌且つ苛立ちに近いもやもやを感じていた。  学校の敷地内にあるプールでは、男女がプールを二つに分け一斉に授業を行う。  よくこの高校生という時期になると、体育の授業自体を男女で分ける学校も多いが、うちの学校はそういったものが一切ない。  そのため、男子にとってはこの夏の体育の授業は、ある意味天国のようなものらしい。  そんな話を以前加地君に聞いた時は心底驚いたが、別に本人がそういう意見を持っていた訳ではなく、周りがそう騒いでいたと当人はとても不思議がっていた。  其処がまた彼らしいと思わず思い出し笑いを堪えながら、プールサイドにある屋根付きのベンチで一人寂しく見学の体勢をとっていた。  今年から帰宅部になったあたしは、去年まで運動部に入っていたこともあり、体を動かすこと自体は嫌いじゃない。  むしろ好きな部類に含まれるのだが、その中でプールという夏の熱い空気の中火照った体温を下げることが出来る授業は、去年から引き続き楽しみのひとつであった。  それなのに、女子特有の事情で見学を余儀なくされ、しかも同じ事情や体調不良者が一人もいない今日、見学者用のベンチで寂しい授業時間を過ごさなくてはならない。
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