「苦手だ」

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 太陽の光を反射して、水面がキラキラと輝く。  その中で友理も牡丹も、楽しそうに泳いでいる(あまり運動が得意ではない上に泳ぐのが苦手な牡丹は、必死に泳いでいる所為であまり楽しそうには見えなかったが)。  本当ならあたしもあの中にいたのに、と自分が女に生まれたことを些細ながらも恨めしく思っていた。  そして、もうひとつつらいのが、生理に伴う生理痛の痛みである。  あまりひどい方ではないのだが、お腹が痛むというよりも腰にくるタイプだったので、何はともあれ女子にとってこの時期ほどつらいものはなかった。  プールに入れないことと生理痛の痛みで苛々していると、ベンチの方へ近付いてくる人影が見えた。  仲間がいたのか、と思わず浮かれそうになるが、その人物の顔を見た瞬間、表情が僅かに引きつった。 「お前、一応体調不良者扱いになってるんだから、いくら寝不足でも見学中に寝るんじゃねぇぞ、片岡」 「へーい」  首から下げたホイッスルを銜えながら話す男性教員に向かって、ひらひらと面倒そうに手を振って近付いてくる片岡君。  思わず、じりじりとベンチの端っこに逃げて、極力距離が空くようにしていた。  それに気付いているのか否か、彼は一度ベンチ前で立ち止まると、その隅にどさりと力なく腰を下ろした。  数秒ほど間が空いてから、彼はぼそりと呟いた。 「見学者の割に、元気そうじゃん」  なんとなく、その言葉に嫌味が含まれているような気がして、小さな棘が刺さったような気分だった。  その言葉にやっと視線を横に向けると、じっと空を見上げていた片岡君の目が、ふとあたしの方へ向いた。
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