「苦手だ」

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「本当にあり得ない。  男ってなんでこう、腹の立つことばっかりするのかしら」  やけに強い語気で言い捨てながら、力いっぱい机を叩く友理。  その反動で、机の上に置かれた弁当箱が一瞬、宙に浮いた。  そんな彼女をなだめながら、もう一人の友人である鈴村牡丹(すずむらぼたん)と協力して彼女の話を聞いていた。  今朝からずっとこの調子で荒ぶっている友理に、クラスメイト達は皆僅かながらも怯えている。  まるで彼女の心境を表しているかのように、昨日は晴れ晴れとした晴天が広がっていた空は、怖々しい曇天に覆われて太陽はすっかり顔を隠してしまっている。  おどおどとした空気が教室に充満している中、それすらも気にも留めず怒り狂う彼女に、あたし達はただ呆然としていた。 「気持ちが離れたから別れようって言ったら、それを一度は受け入れたくせに、べたべたと懲りずに付きまとってきて。  ネチネチネチネチ、男らしくないのよ。  そういうところが別れを切り出された原因だって、どうして気付かないのかしら」 「まあまあ。  それだけ、友理のことが好きだってことでしょ。  ここまできっぱり割り切られたら、向こうも未練がましくなっちゃうって」 「だからって、しつこく付きまとってくるのは、男としてもどうかと思うのよ。  好きなら相手のためを想って、さっと身を引くことも必要だと思わない?」
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