第3話

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 ただ単に過去の事件を掘り起こし推理ゲームをしたところで番組がどれほど盛り上がるかわからない。だがこういう大掛かりなドッキリ企画と抱き合わせということならば番組としても盛り上がる。 「そうか。じゃあ僕たちはそれにあわせて何かリアクション取らないといけないね」  フフフッと神野は端正な顔に笑みを浮かべた。ドッキリ番組は意外に本人たちが気付き対応していたりする。求められるのはリアクションだ。  彼らがそう示し合わせている時だった。 田村、宮村、大森の3人が歩き出した。歩きながら田村は皆に説明する。 「私たちは紫条家の屋敷に一旦行きます。ここは危険だわ。狙われたら逃げ場がないもの」  リーダー格は年長者の田村のようだ。それにあわせて宮村が三上を誘った。この二人はチームだからだ。三上は神野を一度見てから、頷きあうと三上は田村たちと合流し、島の中に去った。さらに河野と篠原も無言で立ち去っていった。  残されたのは芸能人やスタッフたちばかりだ。彼等は一応「あまり他所には行かないでくれ」と言ったが確固たる自信もなく口調も自然弱かった。立ち去っていった参加者たちは立ち止まる事無くそのまま去っていき、スタッフたちはそれをどうしたらいいか分からず、かといって行動もできなかった。 「そういえば……あの変な映像が流れる前、銃声らしいのが数回ありましたけどあれは何だったんですか?」 「それはナカムラ捜査官たちが向かいましたよね」 「そういえば彼らは何してるんだ?」  スタッフたちも口々に零しながら、一応荷物を置いたりどうするか相談しあっている。  そのさらに5分後だった。  ついに<死神>の一人が役場に現れたのは。  <死神>はSMGを構え、そっとこちらに歩いてくる。撃ってはこない。 「ほら、やっぱりポーズだけやで」と呟く平山。 「やっぱドッキリや。あれ、水鉄砲やろ」と近藤。 「よし!」  神野は笑みを浮かべると、「オレに任せろっ!!」と声をあげ、<死神>に向かって走った。アクション映画もこなしてきた神野の逞しい右拳が振り上げられる。皆が一人勇敢に飛び掛っていく神野を見守った。
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