第3話

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誰もが、神野が迫力いっぱいに<死神>を殴り倒す……そう予想した。  だが、現実は彼らの想像を悉く裏切り、最悪の光景を観客に見せ付けることになった。  <死神>は銃を一度下げた。だが次の瞬間、すばやく身構えた。そして躊躇うことなく引き金を引いた。1秒の間に数十発の弾丸が全て神野の体に吸い込まれ、そして破壊した。 「おわあぁぁぁぁぁっ!!」  神野は断末魔の叫びを上げると、自身の体から噴出す血煙の中、ゆっくりと倒れた。 「ぎゃぁーーーっ!!」 「うわぁぁぁーーーっ!!!」 「マジかよぉっ!! おいマジかよっ!!」  空気は一変した。 そこに残った全員が悲鳴をあげ、そして蜘蛛の子を突いたように人々は四方に走り出す。だがこの役場の奥は港で、逃げ場はない。防波堤に走り戸惑う者、役場に逃げ込む者、訳もわからず走り出す者など…… <死神>は、無言のまま逃げ惑う人々に向かって発砲していく。ただし逃げるほうも全力で走っていて、セミオートの射撃では当らない。  役場周辺は、大混乱となった。 <死神>は持っているSMGの一本目のマガジンを使いきり、空のマガジンを捨てた。そして腰にあるホルダーから45口径が25発つまったマガジンをSMG、H&K UMP45に差し込む。 そして<死神>は大騒ぎするスタッフたちを尻目に死んだ神野の遺体から十字架を奪い取ると、地面に叩きつけ銃底でさらに叩き、プラスチックでできた十字架を完全に破壊した。これで現存する十字架が一つ減ったことになる。つまり、<死神>に殺害されれば、十字架自体が消滅する、ということだ。 スタッフたちは四散したが多くは役場の中に逃げ込んだ。 「なんてこった」  鳥居は役場の中から呟いた。自分たちの失敗に気付いたのだ。 <死神>が次に襲ってくるのはこの役場ではないのか!?  この役場に入り込まれれば彼らには逃げ場がない。  ……バリケードをつくらねば……   だが立て篭もれば、他の<死神>も来る。抵抗する術もない。 <死神>はゆっくりと銃口を役場に向けた。標的は役場と決めたようだ。 「伏せろっ!!」  鳥居は一緒に逃げ込んだ仲間に叫びつつ自分も奥に走った。次の瞬間、銃弾が3発、4発、3発と役場のドアや窓を破壊し飛び込んでくる。鳥居たちは悲鳴を上げた。地獄のような数秒間だ。25発、撃ち切るまで<死神>は役場を外から銃撃し続けた。
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