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それでも赤の他人であったアタシを心の底から救い出してくれた。
不満や後悔も一切無く、まるで魔法の如く綺麗に全てを終わらせた。
正直な話、祐樹以上の人がこの先アタシの前に現れる事は無いだろう。
そうだとしても、アタシが彼と深い関わりを持つ事はもう無い。
何故なら祐樹がそれを望んでいないからだ。
だけどアタシは不思議とそれを悲しいとは思っていない。
祐樹の気持ちを尊重しなければならないし、更には祐樹と結ばれようなんて贅沢な話にも程がある。
それに、深い関わりを持つ事は無くても祐樹との友人関係が終わったわけじゃない。
いつでも会える、いつでも話せる。
アタシにはそれ以上の贅沢なんて必要無かった。
「初恋ですかぁ、初々しくて良いですね」
「まぁ、結局フラレちゃったんで友人同士のままですけど。アタシが勝手に片想いをしているだけです」
生まれて初めての感情だけど、片想いというのも悪くないかな。
うん、大丈夫。
もう何も怖くない、何も迷わない。
自分を信じて、そして自分を信じてくれる相手を信じて、アタシはこれからも頑張る努力をし続ける。
そう教えてくれた彼は、アタシ以上に色々な事を頑張っているのだから尚更だ。
「こんなアタシですが、これからも応援してもらえると嬉しいです。失った信用を取り戻す事もそうですが、これからは初心に帰って……ここが新しいスタートだと思って頑張りますので────よろしくお願いします」
初心忘れるべからず。
その言葉を自分の胸の中で反芻させ、アタシは再びカメラに向かって頭を下げた。
柏瀬リリィの芸能生活はここから新たに始まる。
もう諦めないし挫ける事も無い、嘘も言わない。
本当のアタシを皆に知ってもらいたい。
そしていつか、アタシも祐樹の様に誰かを心から救える人物になりたい。
それが今のアタシの将来の夢であり、目指すべき目標です────。
────第二部完結────
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