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「それで、今日の予定は決まってるのかな?」
「はい。まず最初は公園でのんびりしようかなーと」
「じゃあ適当に歩こう」
「……」
「……」
「あのさ上坂」
「あのですね監督」
「……」
「……」
「え、えっと、なにかな?」
「監督こそなんですか?」
「い、いい景色だなーと」
「そうですね。夜に来ればもっと良さそうです」
「そ、そうだね」
「……」
「……」
「あの、監督」
「な、なにかな?」
「サッカーのことなんですけど」
「サッカー? よーし! いいよ、サッカーの話なら!」
「最近、弟が私の動きについて来れないんです」
「それはそうだよ。上坂の方が年上なんだから」
「でも男の子なんですから、私くらい簡単に抜かせないと」
「無理だって。僕のチームでもトッププレイヤーな上坂に勝てるわけないって」
「むっ。監督、今弟のことバカにしましたね」
「してないよ! むしろ上坂を褒めたつもりだよ」
「私のサッカーは弟のためにあるんです。私がいくら上達しても意味ないんです!」
「そ、そうか。なんかごめん」
「わかってくださればそれでいいんです。あっ」
「どうかした?」
「今そこのカップルがキスしてました」
「えぇ!? まだ午前中だよ!?」
「愛し合ってる人たちには、時間も場所も関係ないんじゃないですか?」
「ダメだよ! ちゃんとモラルを持って、規則正しい異性交友をだな」
「傍から見たら、私達もカップルですよね」
「えっ」
「監督、私達も手くらい握りますか?」
「えぇ!?」
「弟とはよく手を繋いでるんですよ。嫌がられますけど」
「そりゃそうだよ。僕だって嫌だもん」
「そ、そうですよね。すみません」
「あっ、いや、嫌じゃないけどさ、一応僕って監督だし、上坂も大切な選手だからさ、大事にしたいっていうか、あまり勘違いされるような仲には――」
「監督! 船ですよ! 船!」
「……そうだね。船だね」
「今度弟と来た時乗ろうっと! あっ、監督が乗りたいなら今乗りますけど」
「いいよ。遠慮しておく」
「そうですか。あぁ、なんで急用が出来るのかなー? 弟のバカ!」
「……色々考えてた僕がバカだった。そうだよな。上坂は弟大好きだもんな」
「監督?」
「気にしないで。独り言だから」
「そうですか?」
「……今日は大人しく上坂の相手をしよう。色恋沙汰なんてあるわけないんだ」
「監督。顔、赤いですよ?」
「気のせいだよ! うん! 何もかも気のせい!」
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