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「うぅ、寒い」
「そうですね。ついこの間まで暑かったのに」
「お店に入っている間に日が暮れちゃったし、そろそろお開きかな?」
「監督! 私、朝行った公園にもう一度行きたいです!」
「いいけど、あまり遅くなるとご両親が心配するから」
「わかっています。けど、どうしても監督と夜景が見たいんです!」
「わかった。じゃあ行こうか」
「……監督、寒いですか?」
「あぁ。ポケットから手を出したくないくらいには」
「もう。ダメですよ? お手手はちゃんと出してないと」
「お、急にお姉ちゃんっぽくなったな」
「寒くても我慢ですよ。監督」
「わかった。上坂の言うとおりにするよ」
「とは言っても、私も寒いです」
「そりゃそうだよね」
「そこで監督、提案なのですけど」
「なにかな?」
「手を繋ぎませんか?」
「……え?」
「寒い時、よく弟の手を握って歩いてるんです」
「へぇ」
「だから、監督もやりましょう」
「いいよ。恥ずかしいし」
「でも寒いですよね?」
「我慢する」
「ダメです! お姉ちゃんが許しません!」
「お姉ちゃんって。僕は上坂の弟じゃないよ」
「いいんです。監督はお兄さんですから」
「お兄さん? 僕が?」
「はい! 優しくって、頼りになって、サッカーを教えてくれる、自慢のお兄さんです!」
「あはは。なんか恥ずかしいよ」
「だから、その。兄と姉ですから、手を繋いでも問題ないですよね?」
「兄と姉って。現実的に言うと、僕が兄なら上坂は妹になるんだけど」
「とにかく、手を繋ぎませんか?」
「……わかった」
「ありがとうございます!」
「……温かい」
「はい。それに、監督って手が大きいんですね」
「そうかな?」
「はい! 弟と全然違います!」
「そりゃそうだろうね」
「……」
「……あのさ、上坂」
「はい」
「この状態って、傍から見ると恋人だよね。兄と姉ってより」
「……」
「上坂。顔、赤いけど」
「き、気のせいです!」
「そう?」
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