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「…んっ…んむぅ…」
次第に主導権はこういちに移り、僕はキスをされながらゆっくりとソファに押し倒された。歯列をなぞられ、十分に舌を甘噛みされてすっかり気分がとろけた頃、白いワイシャツの下に彼の手が入ってきた。唇が離れると、銀の糸が彼の後を追うように引いた。こういちはそれをわざと大きな素振りで舐めとった。それを見ただけでもぞくぞくと肌が震えて、少し涙目になる。
「冬夜」
呼び掛けに応えるように視線を上げる。熱を帯びた瞳が、まっすぐ僕に向いている。
「こんな格好で言うのも何なんだけど、」
「なに…」
こういちは僕の顔をじっと見つめた後、照れ臭いのか、笑いながら視線を外した。
「ぷっ…何か、ごめん…っ」
「何笑ってるんだよ! 僕、そんなに可笑しい?」
「…いや、そうじゃなくって…」
否定するこういちだけれど、口に手を当てて本格的に笑い出した。まったく失礼すぎる、と内心怒りながらも、愛しい人の笑顔を見たら、次第に気持ちが穏やかになっていった。
(…まぁ、いっか…こういちの笑った顔、貴重だし…)
大好きな人が、目の前で、しかも僕を襲おうとしている格好で笑っている。再会して感じた大人びた雰囲気はどこへやら、笑った顔はまだ少年のようだった。
「ねー、いつまでも笑ってないでよー…」
「はは…ごめんごめん、まさに絵に書いたように、潤んだ瞳で上目遣いされちゃったからな。可愛くって…っ」
「…わざとじゃ」
「分かってるよ。だからいいんだろ」
言いながら、頬に音を立ててキスされる。もう照れとか恥ずかしいとかの域を越えて、愛情だけを感じる。
「…あのな、俺が言おうとしたことはね、」
「うん」
「ちゃんとした別れ方はしてないけど、どう考えてもこの三年間は付き合ってるとは言えないだろ? 俺たち」
「……うん」
「だからさ、…」
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