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 彼は僕を腕に抱き、顔を埋めた。頬に触れた固い髪から、こういちの匂いがする。  (あ、この匂い…すごく落ち着く)  こういちの前だと、心も体も完全に開いてしまう。普段無意識に着けている鎧なんか、存在しない。  彼の隣だと、生身でいられる。というか、自然に生身になってしまう。  (あ…急に眠気が…)  心拍数が共鳴しているのか、最近安心して眠れていないからか、急に気持ちよくなって眠くなってきた。  「冬夜…」  耳元で、低く囁かれる。甘い吐息も、体に伝わる声の振動も、すべて愛しい。  僕は甘いムードに包まれ、ほぼ衝動的に反り返り、こういちの頬に口づけた。こういちは照れ臭そうにしていたが、仕返しとばかりに耳をパクリと食んできて、ついでに甘噛みもされた。  「んあ…」  耳の縁を柔らかな舌になぞられ、僕はピクリと跳ねてしまう。  「可愛い…」  「可愛くないよ…」  「何で? 可愛いよ。冬夜みたいな別嬪は滅多にいないし、動きとか…もう…」  こういちはそう言いながら、僕を後ろから強く抱き締めた。こういちの腕が、僕の胸と腰に深く食い込む。  「こういち…どうしたの?」  「どうしよ。おまえをただ触ってるだけなのに、…もう何か、やばい」  「…え…」  「おまえに触れれば触れるほど、どんどん好きになってく」  後ろを振り向いたら、苦笑いしているこういちがいた。しかし、その瞳の奥には、煮えたぎる欲情のマグマが、チラリと垣間見えた。  僕は頬がゆるんだ。記憶をなくして、気持ちも離れたこともあったとか言っていたけれど、また、僕のもとへ戻ってきてくれた。  これ以上の幸せがあるだろうか。  「…いいよ。嬉しいから」  「冬夜…」  こういちは、僕の返事にいささか驚いた顔をした。僕はそんな彼の首に腕を絡めた。  「……というか、むしろ食べてほしい…こういちに…」  整った顔の前でニッコリ笑い、僕は誘うようにキスをした。今度は、今までよりもさらに深く絡め、舌先を吸う。フレンチキスなんかしてしまうと、必然的に炎よりも燃え上がってしまう。上顎をいやらしく愛撫されるだけで、下半身がズクズクとうずいてしまう。
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