起:初めての恋

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 「頼むぞ」  ニッと一瞬だけ最後に笑んで私にその資料を渡すと、スッと仕事の顔に補佐は戻る。それを見て私も気持ちを切り替えなきゃって思って「はいっ」と力を込めて返事をした。  厳しいけど、うまい具合に空気を抜いてくれる永友補佐。  部下の扱い上手いな……  なんて、すっかりこんぺいとう一つで踊らされた私は、自席に戻るとすぐさま小さな一欠けらを口の中に放り込んだ。コロコロと口の中で弄びながら、表情を崩した補佐の顔をチラリと思い出す。  その顔を思い浮かべて、にへらと笑ってしまった自分を慌てて両手で隠すと、誤魔化すようにべちんと頬を叩いてから慌てて与えられた仕事に取り掛かった。
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