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止められずに漏れ出た声を抑えるようにハンドタオルを口元に押さえたら、瞳に溜まりすぎた涙までは止められずに横から流れ落ちる。
けれどそんなことに構う余裕もなくなった私は、そのまま扉を背にしてずるずるとしゃがみ込み、人目が無くなった安堵からぼろぼろと涙を流した。
――ここは泣くところじゃない
そんな常識は理解してる。
それに、仕事中に泣くなんて社会人としてあるまじき行為だってことも解っている。
だけど……人間触れられたくないことも、人によっては地雷の言葉もあって、その『地雷』を私も持ち合わせていた。
そしてその地雷をしっかりと彼が踏んでしまったから、私は駄目だという気持ちを押しのけて、自分を押さえることが出来なくなってしまった。
『男、いないんだろう』
『その声じゃあな』
『お前みたいなの無理だろ』
『遊ばれて捨てられる』
『男が出来ないのを仕事のせいにするな』
それらの言葉は、私にとって最大の禁句で最も気にしていることで……誰にも触れられたくない過去に繋がる言葉。
だからこそ言われたことを無視できなくて、頭にこびりついて離れない。
電話を切ってから10分は経つというのに、脳内に奴のねちっこい声が木霊して、忘れたいのに消えていかないその言葉の数々を思い出しては涙が零れる。
止めることを放棄した私はそのままただ泣き続け、いつのまにか辛い過去を思い出していた。
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