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けれど帰り道に突然告げられたのは「キスしたい」って欲求。
今日手を繋いだばっかりなのにありえない! って、お付き合い初心者の私はそう思ったのに、「したい」という強引な要求に抗えずに、壁に押し付けられて無理矢理唇を奪われた。
その時の私は突然の出来事にただパニックで、少しずつ距離が縮まるだなんて無理なんだろうかって、そんな思いが巡ってただ辛いだけの初めてのキスを耐えるしかなかった。
2回目のデートもすぐに訪れて、結局カラオケに行った。いつもよりもやけに近い距離で座る彼は、私にぴったりひっついて離れない。
「暑いんだけど」と訴えてみてもどこ吹く風。
「俺のこと嫌い?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
みたいなやり取りをすること数回。歌い始める私を余所に、太ももに手を這わせる彼。
「歌ってるから」
「……いいだろ、別に」
なんとなく、嫌だった。
漫画みたいなベタな甘い付き合いが実際できるなんて思ってはいなかったけれど、こんなのはナシだって思いが巡る。
体を捩って少し距離を開けると「感じてんじゃん」って勘違い甚だしく、ニヤニヤした顔で近づいてきた。
結局、マイクは取り上げられて無理やり口を塞がれた。
入力した音だけが次々と鳴り響く中、私の口内を這いまわる舌。
ねっとりした感触と、飲んだばかりのコーラのせいで上がってくる炭酸。
不快感が募るばかりなのに、スカートに差し入れられる手。
我慢して我慢して。
最後に「こういうの嫌」ってやっと言えた。
けれど私の常識にはない言葉で返される。
「付き合ってんのに普通だろ?」って。あまりのカルチャーショックに言葉が出なかった。
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