承:始まる恋

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 彼の部屋に入るなり、後ろから抱きしめられてドキリとした私に対し、突然彼は私の胸を鷲掴みにした。しかも両手で。  「やっぱでけー」  耳元で嬉しそうに囁かれ、甘い何かとは程遠いその言葉に発狂しかけながら、ただついていけなくて身体を硬直させた。  背後にいるせいか傷みに顔を歪める私には気がつかず、勝手に胸を掴んでは離すを繰り返して、勝手に弄ばれた。  ――これも、彼氏彼女なら当り前?  何度も自問自答して、私は痛みを堪えるように涙だけは零すまいと思いながら唇を噛みしめた。  その後はもう、想像通りに散々な目に遭った。  彼から「ヤろうぜ」なんて宣言をされて押し倒されてから、ヤル、ヤラナイの押し問答。流石にベッドに押し倒されて正気に戻った私は、望んでもいないことを無理矢理にされてまで我慢することはないんだって悟って、大いに抵抗した。  そうして彼は言ったのだ。  「俺、お前の胸が触りたかっただけだよ? お前だって誰かとヤリたかっただけだろ? 今更純情ぶんなよ、可愛くもない癖に」  罵詈雑言。激しく酷い言葉の数々を浴びせられて、抵抗したズタボロの状態のまま、心までずたずたにされた。  最後に吐き捨てるように言われたのは「大体、お前の声なんて子供っぽ過ぎてたたねーし」なんて言葉。  あまりの屈辱に、絶対に泣くもんかって思いながらも、その場で号泣しそうだった。  圧し掛かった状態だった彼を無理矢理押しのけて、適当に身なりを整えてそのまま彼の家を飛び出た。その時の記憶なんてもう覚えてないけれど、ただ苦しくてボロボロに泣いて帰ったのは覚えてる。  ただ泣きながら分かったことは、彼は私を好きではなかったけれど、私も彼を好きじゃなかったってこと。  そんな気持ちで付き合うことがそもそも間違いだったっていう後悔と反省をした。
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