1167人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
そして当時Eカップで身長の低さと共に目立ったソレを、私にとってロクでもないものとインプットした。
中学よりかれこれ5年続けている演劇人間の私にとって大事なモノの一つは声だったりする。その声を酷い言葉で貶されて、私は立ち直ることが出来そうになかった。だから決意したんだ。
彼氏なんかいらない、絶対に……って。
初めての彼氏でかなり痛い思いをした私は、高校時代それ以降彼氏なんて存在に興味を抱くことすらなく、ただただ平和で楽しい毎日を過ごした。
しかし短大を経て社会人になり、周りの友達にも彼氏がいるのは当り前な空気が蔓延し始めたことや、彼氏のいる友達をやはりどこかで羨ましいと感じる自分がにょきりと顔を出してきた。
そうして短大の卒業間近になって、私にも気になる人が出来てしまった。
それは、私が初恋を自覚したあの時に近い気持ち。
――助けてあげたい
そんな感情を抱いて、私はこれを恋だと勘違いした。
よくよく考えたら、それはあの大切な初恋とはベクトル違いの気持ちだったのに、恋愛初心者の私はここでも大きな勘違いをしたのだ。
「お前、御飯作るの上手いよな」
最初は、そんな言葉にほだされた。それから徐々に彼は私の家に入り浸るようになり、自然と一緒に過ごすことが当たり前になった。
一緒に居る時間が長くなれば情が湧くのが人間だ。どことなく頼りのない彼を助けてあげたい、支えてあげたいという気持ちは日増しに大きくなり、私は彼の傍に居ることで『彼氏彼女』という関係に満足感を抱き始めていた。
あぁこれで私にも彼氏ってものが出来た、って喜びが無かったと言えば嘘になる。
やっぱりあの頃は、羨ましい気持ちの方が大きかったんじゃないかと思う。
最初のコメントを投稿しよう!