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何せ彼は営業4年目。
一抜けした私を少し羨ましく思っていることを知っているからこそ、私はその表情をちょっと苦い顔で見つめる。
「俺? うーん、まぁぼちぼち。つーか俺自身は異動してないし」
「あはは、……だよね。あ、でもさ。メンバー変わると違うでしょ?」
「まぁー、な」
私の問いかけに、なぜだか嬉しそうな表情を浮かべたもりやん。
――可愛い子でも入ったのかな?
なんて表情の崩れたもりやんをにやけた顔で見ていたら、嬉しそうな笑みをすぐさま引っ込めて、少し真剣な表情を見せ、思いもよらないことを尋ねてきた。
「そういや、噂の補佐どうよ?」
「噂? 何それ」
寝耳に水、というか全く聞いたことのない『噂の補佐』というフレーズに首を傾げた。
「知らない? なんか超出来るとかって。若干30歳にして課長補佐だって。そもそも補佐なんて枠なかったのに、若すぎるからって理由で上から反発食らって課長にせずに補佐にしたって話。すげーよな」
「へぇ……」
正直、今日一番気になった人物が今話の的である補佐であるだけに、私の興味も募る。
何せ初対面は、記憶にはないものの体当たりだ。
ゆっくりと自分なりに今日見た補佐像を思い浮かべる。
――背は、見上げた感じから考えると、170㎝後半くらい?
あんまりごつくはなくって、すらっとしてたよね……
ノンフレームの眼鏡かけてて。
あ、髪は短くてワックスで整えてたっけ?
顔……顔? 切れ長の目にスッキリした感じだったかな。
やばい、声のイメージが強すぎて、はっきりしないかも。
脳内で少しずつ思いだしながら、補佐像を構築する。
今日数回目にしただけの人だから、しっかり覚えてなくても許して欲しい。
あーだこーだ言いながら補佐像をもりやんに伝え、そんな曖昧な記憶すらも酒の肴にしながら、気が付けば同期会はお開きとなっていた。
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