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本音を言えば、もりやんにあれこれ聞かれたけれど、補佐に対して特別な感情を抱くことはなかった。
あくまで上司、ただそれだけ。
時折なぜだか感じる懐かしさに少しの不思議さを感じたけれど、それは一瞬のことで、それが私の気持ちを何か乱すこともなかった。
それに歳だって8歳も離れてるし、役職的にも平社員の私とはかけ離れていて遠い存在で……もりやんの話を聞いて、私とは程遠いくらいすごい人だって思ったくらいだ。
だから異性として、永友刻也その人を見ようなんて気持ちは湧かなかった。
でもそれは、自分のあまりにも酷い男運のせいで、彼氏が欲しいだとか、そんな感情を持っていないせいかもしれないけれど――
そんな、さらりとした、初めて出会った上司と部下以上の関係性を感じることのない再会が……あなたと私の、偶然の再会。
――――――
「コレ40部用意して。それからこっちは郵送してくれ。後これをエクセルのデータに置き換えてグラフ作成。頼む」
「はいっ」
翌日からの仕事は激務だった。
もりやんに言ったように、私の配属された総務課と言うのは本当にバックアップセンターそのもので。
マルチ対応出来なきゃダメって感じだ。
電話も出るし、出張もするし、顧客対応もすれば、クレームも受ける。
他部署の大型会議のセッティングも取り仕切り、社内の状況は全部把握しなくちゃいけない。
営業補佐として、営業に専念してるだけの方がよっぽどいいんじゃないの? ってくらい、あっちこっちに気を配って、頭使って動かなきゃいけない。
その上、この忙しい中、私の直属の上司である主任と係長は新人研修の担当になり、本来課長補佐のサポートをするはずの二人が抜けた穴を埋めるべく私がその補佐役に抜擢されてしまった。
だから、この忙しさなんだけどっ!
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