起:初めての恋

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 本来であれば、総務に新人研修の担当を割り振られることはないらしい。それに、課長が居たならばこんなに大変ではなかったはずなんだ。  というのも、私は知らなかったのだけれど……昨日来ていた繁野課長。本当は自宅療養中で出勤できる状態ではなかったらしい。  なんの病気かは知らないけれど、そういう上層部の事情もあって、課長がいない穴を課長補佐が埋めるように存在している感じがする。  そんなことをぼんやりと考えていたら、補佐からまた声が聞こえてきた。  「それから……」  さっき、これで終わりだろうと思って「はい」と返事をしたのに、補佐の指示には続きあったようだ。  『それから』の言葉に、ボンヤリしていた私は思わず「げ」と本音を漏らしてしまった。  そんな自分に焦って口を塞ぎ、慌てて落ち着かない態度を見せると、目の前の補佐が笑い出した。  「くくっ、江藤素直すぎだろ」  厳しい顔つきで仕事の用件ばかりを述べていた補佐が、ふっと表情を緩めて笑った。  あ……なんだ、優しい顔するんだぁって感じて、なんとなく遠さを感じている補佐に近さを感じる。  「すみません、つい」  緩まった空気に、思わずペロリと舌を出すと、それを見た補佐がニヤリと笑みを浮かべる。  「お前なぁ……あ、コレやるからもうちょっと頑張れよ」  呆れた表情でお前なぁと言いながら、引き出しを引いて小さな包みを私に差し出してくれた。  え? くれるの?  という表情を浮かべて首を傾げると、無言でコクンと頷かれたから、私はぺこりと頭を下げてからその包みを受け取った。  袋の中を外袋越しに覗き見ると、小さな星の欠片が詰められているのが見える。  「こんぺいとう?」  「貰いもんで悪いけど。それやるから頑張って」  「ふわーい」  小さく笑ってからちょこっと手を上げて返事をすると、コピーの原本資料をべチンとおでこを叩きながら渡された。
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