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「ただいま~」
ユリアと別れ、自宅の玄関のドアを開ける想。
「おかえり、想。」
家の中から、母親の優しい声が聞こえる。
「おかえり、お兄ちゃ~ん!!」
想が玄関でクツを脱いでいると、2階から勢いよく駆け降りてきたのは想の弟。
名前は神鬼 瞬(カミキ シュン)。
瞬はその勢いで、想に飛び付く。
「おぉっ!?どうしたんだ一体?」
想は、そんな瞬に少し戸惑い気味…
「瞬ったら、こないだ想に勉強教えてもらって、結果が出てはしゃいでるのよ。」
母親がキッチンから、そう声をかける。
「そっか、よかったな瞬!」
想はそう言って、瞬の頭をなでる。
「うん!ありがとう、お兄ちゃん!!」
瞬は満面の笑みで言う。
想は瞬にほほ笑むと、自分の部屋に上がっていった。
「ご飯よ~」
しばらくして、母親の声が2階のそれぞれの部屋にいる想と瞬に向かって発せられた。
ほどなくして、想と瞬が降りてきて食卓を囲む。
食卓には帰宅した父親が、既にビール片手に晩酌をしていた。
神鬼家には、食事の時は家族全員で食卓を囲むというルールがあった。
今まで、ほとんどそのルールは破られた事はない。
「聞いたぞ~、想は学年1位。
瞬もクラスで10位以内に入ったんだってな!
よくやった二人とも!!」
豪快に笑いながら言う父親に、想と瞬は顔を赤らめた。
…やはり二人は兄弟である。
「さぁ、二人とも食事にしましょ!」
母親の優しい笑顔に促され、想と瞬は席につき、食事を始めた。
父親は会社でそれなりの地位にいて…
母親は専業主婦…
中学の弟は自分をしたってくれる…
ごく平凡な家族だが、暖かいこの家族が、想は好きだった。
食卓には笑いが絶えない。
「ね、父さんテレビ見てもいい?」
父親の返事を待たずに、瞬はテレビのリモコンをとり、テレビをつけた。
『………番組の予定を変更して、この時間は臨時ニュースをお伝えしてます。』
テレビに映ったのは、いつも見てる番組ではなく、臨時ニュースの映像だった。
ニュースを読み上げるキャスターの表情は険しい。
神鬼家の面々は、その放送に釘付けである。
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