宣戦

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「あっそ。もう俺には会いたくなかったんだ。忙しいのに呼び出したりして悪かったな。…髪も半乾きのまま、息切らしてまで来させちゃって」 和馬は澄ました笑みを浮かべ、私の髪を指でゆっくりと掬い上げる。 髪はスルリと彼の指の間を流れて行く。 「…別に会いたくなかったなんて言ってないじゃん」 口を尖らせ、彼の笑みからふと外した私の視線は、髪が滑り落ちる彼の左手の薬指で止まった。 「…指輪してないんだね」 小さな声でぽつりと言った。 「ん?…あぁ。オペや検査処置の時に邪魔になるからな。外科ドクターで指輪してる奴いないだろ?」 「知らない。外科ドクターの指なんてわざわざ見ないもん」 「外科医は手が命なんだから見とけよ。みんなしてないぞ」 「いいよ別に。命だろうが外科医の手に興味ないし。…梨花さんも外科医だよね、ならお互いにしてないんだ。家にいる時もしないの?」 「…お前さ、俺の結婚生活とか、そう言うの全部隠し事無しで聞きたいの?」 和馬は小さなため息を吐くと目を細めた。 「…そう言う訳じゃないけど…」 和馬のため息をつく姿を見て体が強張る。
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