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「ひゃーっ、マジ寒い!早く寮に入ろ!」
両腕を擦りながらミチルが歩く速度を上げる。
「うん、早く温かいお風呂に浸かりたい!」
カーディガンのポケットに手を突っ込み、ミチルの後を追い掛ける。
寮の玄関に続く階段を駆け上がり、重い硝子の扉を思い切り引っ張る。
中に入り、風の侵入を防ぐために急いで扉を閉めると一息ついた。
「…こんばんわ」
先に中に入ったミチルの声が聞こえた。
「こんばんわ」
ミチルに挨拶を返す女性の声。
ん?…誰?
私は、ミチルの背中から顔を覗かせる。
「!?…」
私は、ポストの前に立つ女性の姿を見て言葉を失う。
「こんばんわ、綾子さん。お久しぶりですね。綾子さんに会いたくて来ちゃいました」
「白石さん…」
私とミチルの前には、以前と変わらずにっこりと可愛らしい…いや、不快な笑みを浮かべる白石未来が立っていた。
「綾子の友達?」
ミチルは再び白石さんに軽く頭を下げ、その後で私を見た。
ミチルには以前、「翔太を狙うウザイ女がいる」とだけ冗談混じりに伝え、あの出来事については話してはいない。
「…うん。ミチル、先に上がって良いよ。お疲れさま」
「友達?」と聞かれ、「うん」と答えなければならなかった状況が腹立だしい。
ミチルをこの場から立ち去らせようと、笑顔を作り軽く手を振った。
「わかった。じゃあ、お疲れさま…」
私の様子に不自然さを感じたのか、ミチルは白石さんと私、交互に視線を向け手を振り返す。
「お疲れさまでした」
白石未来はミチルに満面の笑みを送り会釈をした。
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