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「それ、どう言う意味?」
彼女の凍りついた冷たい視線に息を飲む。
私の目を見つめふっと鼻で笑うと、今度は柔らかな笑みを見せた。
「そうですね、翔太さんはいずれ私に振り向いてくれるって事です。そうしたら、綾子さん私に会いたくなるでしょ?…私、絶対に諦めませんから」
余裕すら感じる彼女の不可解な笑みに、一瞬背筋にゾクゾクと悪寒が走った。
この子・・・まさか、また何か企んでるの?
「あ、そのケーキ食べてくださいね。ケーキ好きの綾子さんならそのお店知ってるでしょ?形が崩れても、味は変わりませんから」
「……」
まさか・・・考えすぎだよね。
床の一点を見つめていた視線を彼女に移す。
「ありがとう。このお店のケーキ大好き。…翔太があなたに優しいのは、ただの『情』だから。作戦、間違えたんじゃない?」
「…今は、そうかも知れませんね…」
扉を開けながら振り返る彼女。
流れ込んだ風が足元を冷やすのを感じながら、彼女の後ろ姿が闇に消えるまで見つめていた。
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