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「え…あぁ、変な女ね…」
瞬間的に、薬が散乱していたあのおぞましい場景が思い出される。和馬は、無意識に変化した私の表情をじっと見つめ眉を寄せた。
「…何かあったのか?って言うか…何かあっただろ」
「和馬…こんな話聞かされても困るかも知れないんだけど、和馬に聞きたい事があるんだ…」
躊躇しながらも言葉を並べた。
「聞きたいこと?おぉ、いいぞ。俺に何でも聞け」
私の強張る表情を和らげるためなのか、和馬は優しく微笑む。
「実はね、1週間前になるんだけど…その付きまとってる女の子うつ病らしくて」
…
私はあの日の出来事を和馬に話した。
そして、私の話を頷きながら聞いていた彼は、沈黙の後に大きなため息をついた。
「その女の子…うつ病って言うより、今回の自殺企図は一過性の心理的誘因が特定できる適応障害ってやつだろうな」
「適応障害?うつ病とは違うの?」
「適応障害はつまり…うつ状態ってこと。うつ病とうつ状態は違う。うつ病って言うのは、2週間以上にわたってうつ状態が毎日続く。それによって生活機能障害を呈してる状態。その子はその日も普通に出勤して社会生活送ってたんだろ?」
「うん…落ち込み気味ではあったみたいだけど、翔太とのやりとりがあるまでは普通に仕事してたみたい」
「だったら誰でも起こりうる一時的ストレスによるうつ状態。それが自覚症状として、今までの生活が変化する程に辛く感じるか、感じないか個人差がある。15人に1人はうつ状態を経験するって言われてんだから、そんな恐がる事ないだろ。暫く落ち着くのに時間はかかるかも知れないけどな」
「…」
淡々と話す和馬を見ながら言葉を詰まらせる。
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