第三幕 飛んで火に入る何とやら

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ーーーーーーーーーーーーー 辺りが静まり返り、日付も変わる頃。 俺は会合を終え藩邸に歩を進めていた。 頭に浮かぶのはあの得体の知れない女。 もとい、昨日から俺の小姓。 少し欠けた月を見上げ、ため息を漏らす。 あれは…一体何なんだろうね。 話だけだと疑うしかないけれど、あれを見ているとつい信じてしまいそうになる自分。 だいたい、あんな思考だだ漏れの人間に間者なんて務まるとは思えないけど。 黒かと思えば白になる。 逆もまた然り… 「どうにも面倒な女を拾ってきたもんだよ。牛は」 藩邸の門をくぐり、自室へと向かう。 廊下を進んでいる途中。 ふと足を止める。 何気無く考えていた自分の考えに、思わず笑いがこみ上げた。 くくっ。 俺は何を考えているんだろうね。 これじゃあ馬鹿は俺だよ。 俺は…あの人が亡くなってから何も感じなくなった。 全てを奪った、憎き幕府。 俺は幕府に復讐する事だけを考えてきた。 邪魔立てすれば殺すまで… そう。 ただ、それだけだよ。 俺はそこまで考えて、既に休んでいるであろうあれがいる部屋へと足を進めた。

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