1.溺れる身体

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ピピピピッと機械的なアラーム音に目を覚ます。 ぼんやりとした照明しか点いていない薄暗い部屋の中、布団から手を出し音の発信源である携帯に手を伸ばす。 ―――8:00 「やばっ!」 思わず布団を撥ね退け起き上がる。 いつもなら家を出ている時間だ。 早く起きて着替えて…。 寝ぼけた頭をむりやり起こして、一人慌ててベッドから身体を出す。 フローリングの冷たい感触が素足に痛いほど突き刺さる。 静かにベッドを降りようとした時、ぎゅっと腰に巻きついてきたのは腕。 「…今日、月曜」 眠気を抑えようとしない、気だるそうな声で彼はそう言った。 男を感じさせる自分のよりも太くて硬い腕。 その腕にぐいっと引っ張られて再び布団の中へと戻され彼の腕の中に収まる。 背中に感じるのは心地よい彼の温もり。 この声が、この腕が好きだ。どうしようもなく好きなのだ。 もう一度強く抱きしめると彼は甘えるように首筋に顔を埋める。 「ぁ、そっか」 月曜は昼からの授業。 私の授業の時間割なんて言った覚えはない。 会話の中で覚えてくれていたのだろう。 こうした些細なことがとても嬉しい。 先程の焦りで高なった心臓はまだ鳴りやまない。 一先ずほっとしてもう一度携帯を見る。 メールが二件。 あぁ、確認しなければと指で操作しロックを解除しようとするとどこからか伸びてきた手に携帯を取られ、傍の机に置かれる。
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