第9章 過去の傷跡

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 いい香りにそそられスプーンを持って食べ始めようとすると、 「……やっぱり別の物持って来るよ。失敗した」 とアシュトンはお盆ごと引き下げた。未佐の手にはスプーンだけが残される。 「え? どういうことですか?」 「いやだって見た目変だし」 「まさかこれ、アシュトンが作ったんですか?」  アシュトンは目を逸らす。 「いや、その……まあそうなんだけど」 「すごい」 「でもこういうのは初めて作ったんだ。多分美味しくない」 「食べてみないと分からないですよ」  こんなにいい匂いがするのだ。不味いわけがない。
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