第1話「雨」

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…今日は嫌な日。 私の平穏なこの時間を妨害された。 雨は憂鬱な気分になるって言う人が多いけれど、私はバスに揺られてる時間がなんだか落ち着く。 折角のそんなひと時だと言うのに、今時バス内で痴漢なんて ないとばかり思ってた。 と言っても痴漢されているのは私ではない。 痴漢されている子の顔は見えないけど、見て見ぬふりはできない。 私はお尻のあたりをまさぐっていた手をがっしりと掴み、 「痴漢」 と本人に囁いた。 まだ周りの人は気づいていない。 「は、離してくれ頼む」 小声で返してくるのは一見真面目そうな小太りのサラリーマンだった。 「ダメですよ、私ちゃんと見ましたから」 …しかし被害にあった子はどこ?
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