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「あの…あなた誰に痴漢してたんですか?」
「お、俺も顔までは…」
不思議だ。
この小太りサラリーマンの近くには、痴漢をされたであろう人が見当たらない。
なぜなら、みんな男性だから-。
この人、男性に痴漢してたのかな?
「ねぇ」
声をかけられたみたいだけど、
バス内は混雑していて誰か分からなかった。
「どこですか?」
「ここですよ」
フッと含み笑いが頭上から聞こえ見上げると、声の犯人はすぐ目の前にいたようだ。
「俺だよ、痴漢されてたの」
…やっぱり女性じゃなかったのか。
「あの…この方があなたに痴漢をした犯人です」
私はそう言って掴んでいた小太りサラリーマンの手を少し挙げさせた。
ビクッとした小太りサラリーマン。
そんなに怖がるくらいなら、
痴漢なんかしなければいいのに…。
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