第1話「雨」

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「あの…あなた誰に痴漢してたんですか?」 「お、俺も顔までは…」 不思議だ。 この小太りサラリーマンの近くには、痴漢をされたであろう人が見当たらない。 なぜなら、みんな男性だから-。 この人、男性に痴漢してたのかな? 「ねぇ」 声をかけられたみたいだけど、 バス内は混雑していて誰か分からなかった。 「どこですか?」 「ここですよ」 フッと含み笑いが頭上から聞こえ見上げると、声の犯人はすぐ目の前にいたようだ。 「俺だよ、痴漢されてたの」 …やっぱり女性じゃなかったのか。 「あの…この方があなたに痴漢をした犯人です」 私はそう言って掴んでいた小太りサラリーマンの手を少し挙げさせた。 ビクッとした小太りサラリーマン。 そんなに怖がるくらいなら、 痴漢なんかしなければいいのに…。
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